5月10日 厳密に言うと「勇者」って人から敬意を込めて呼ばれる呼称で、職業の名称じゃないよね。 |
●ラノベ読んだよー。

勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。
著:左京潤/画:戌角柾 出版:富士見ファンタジア文庫
~あらすじ~
勇者試験直前に魔王が倒されてしまい、勇者になれなかった少年ラウル。
幼い頃からの夢が破れて腐っていたラウルは、王都にあるマジックショップで働く日々を送っていた。
そんなある日、一人のバイト志望が驚愕の履歴書を持ってショップに現れる―。
名前・フィノ、前職・魔王の世継ぎ、志望動機・親父が倒されたから。
魔王の子供・フィノの教育系に指名されたラウルだったが…。
「敬語ってのはな、丁寧な、かたい感じの言葉遣いだよ」
「フハハハハ。よくぞ我がレジまでたどりついたな、お客様め!」
「ストップ!ストップ!…いったん落ち着こうか」
勇者の卵と魔王の卵が織りなす、ハイテンション労働コメディ。
******
現実世界の日本は就職難やら失業率からで不況真っ只中ですが、
ファンタジー世界にも不況の嵐が!? というコンセプトで作られたこの作品。
勇者が居るからには倒すべき魔王がいるわけで、
その魔王が倒されてしまって勇者そのものが不要になってしまい、
幼い頃から勇者を目指して日々修行を重ねていた主人公が、
夢破れて場末のマジックショップの店員にしぶしぶ就職するというぶっとんだお話。
そこにバイト希望でやってきたのが倒された魔王の娘というから、さあ大変。
ラノベのファンタジー世界に不況という、ありそうでありえない組み合わせが面白かったです。
ヒロインのフィノが世間知らずながら、健気な子で人間の世界の労働の素晴らしさに目覚めるのですが、
魔王になりたくない彼女を魔王に仕立て上げようとする怪しい影が。
当然その連中は魔族の生き残りと思うのが普通のファンタジーラノベですが、
正体は元・勇者たちで、魔王が倒され、勇者がいらなくなった世界に再び魔王を復活させ、
そしてまた自分たちが勇者として仕事が潤うようになる、という今までの勧善懲悪を覆す展開に驚かせられました。
今まで魔王が居た時代にも、そんなエセ勇者たちが結託して
魔王を倒させないよう魔族と協定を結んでいたというカラクリ。
良く考えられてますね。
全編ほとんどがコメディで展開されますが、
幕間の過去編、まだ幼い魔族の娘・フィノに感情を教えてあげる本物の勇者のシーンはなんとなく
「ダイの大冒険」のアバン先生とヒュンケル、魔物の父・バルトスを思い出しました。
発想の勝利、ということで楽しく読ませていただきましたが、
作者さんは今作がデビュー作とのことで、少々状況描写に物足りない部分も。
特にアクションシーンが顕著で、そのせいでその部分の燃え要素がイマイチ。
まあ、これは経験を詰むしかないでしょうね。
勇者になりたかった少年と魔王になりたくない少女、彼らにはこれからどんな難関が待ち受けているのだろうか。
★5、100点満点
勇者になれなかった俺は
しぶしぶ就職を決意しました。 |
著:左京潤/画:戌角柾
出版:富士見ファンタジア文庫 |
ストーリー |
★★★★ |
挿絵 |
★★★★ |
文章 |
★★★ |
キャラ |
★★★★ |
オリジナリティ |
★★★★★ |
総合 |
85点 |
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